小学生の頃、幼なじみのレイコちゃんの通っている絵画教室が学校の帰り道にあって、
教室の日にレイコちゃんが先生の庭の扉をひょいと開けて入っていくのが、
羨ましくて仕方なかった。
絵を描くのはとても好きだったけど、
それ以上に先生の家の庭に、大きなびわの木があって、
季節になると通っている子達が実をもいでもらえるのをそばで見ていたからだ。
母にせがんで、習わせてもらうことが決まったとき、
わたしの頭のなかはオレンジのびわでいっぱいだった。
でも、初めて食べたときの味は覚えていない。
同じ頃、同級生に遠藤さんという子がいて、
わたしは彼女の家に遊びに誘われたくてしかたなかった。
庭にぐみの木があって、
遊びにいった友達は、実を食べさせてもらっていたからだ。
新興住宅街の地元では他に見かけたことのない、
甘酸っぱくて、かわいいその実が食べたくて、
わたしは遠藤さんのご機嫌とりに必死だった。
そのくらいの年の女の子にありがちな、
機嫌を損ねると、あんたは食べちゃダメ。といういじわるを受けないように。
この間、それ以来初めて、ぐみの枝に出会った。
頼んでひと枝もらって、待ちかねたように、家に帰って一粒口に入れたら、
思っていたより渋かった。